2017年2月12日日曜日

『カルテット』 登場人物名の意味



脚本家や作品によって登場人物の名前の付け方は違う。坂元裕二の場合は名前に意味を持たせることが結構あるような気がする(例えば『わたしたちの教科書』や『問題のあるレストラン』に出てきた「雨木」)。脚本家にヒントを出すつもりがなくても、作品やキャラに絡めたネーミングであれば、見る側からすれば作品のヒントになる。『カルテット』ではキャラの名前に意味がある場合が多そうなので、自分なりの推測を書いてみようと思う。


・家森諭高
前にも書いたように、森には3つの木があるので「家森」には「3人の家」という意味を込めたのだと思う。「諭高」は文字通り、「高いところから諭す」でキャラを表している。第1話から家森はあれこれ御託を並べているが、第4話では自分の部屋に3人が来たとき布団の上に座らせ、自分だけ机の前の椅子にすわって高い位置から離婚の経緯を話していた。茶馬子が別荘に来た時は階段横の壁に座り、わざわざ高い位置から話している。そんな上から目線で物事を語る家森だが、肝心なところで致命的なことを茶馬子に言ってしまい、結局家族を失うことになった。高い所から落ちて壊れた『マザー・グース』のハンプティー・ダンプティーが発想の元になっているような気がする。駅の階段から落ちて入院するくらいの怪我もしてるしね(笑)。

・世吹すずめ
「渡来」は"What's a lie?"、「世吹」は"safe key"(金庫の鍵)なだろう。「世吹」は「せぶき」なのだが、いいんじゃないかな(笑)。納骨ボックスの鍵をすずめは「金庫の鍵」と誤魔化していたので、それに由来するのだと思う。「すずめ」は前にも書いたように、日本の昔話やイタリア語の"cello"が「小さい」にも由来するのかもしれない。

・別府司
別府と言えば温泉で、地獄巡りの湯を思い出す。「地獄を司る」のはエンマ大王。第8話で別府と真紀をくっつけるためにすずめは嘘をつくし、結果的に別府へ告白できなくなるのを「舌を抜かれた」とみなしてもいいのかな、と思う。

・巻鏡子
結果的に真紀とすずめを結びつけるきっかけになったのは鏡子の疑惑からだった。真紀とすずめは鏡像関係。二人とも父親に傷つけられ、名前を変えている。

・来杉有朱
有朱はルイス・キャロルの童話に出てくるアリスからとったものだろう。「地下アイドル」は「不思議の国」を、「淀君」は「鏡の国」(白のポーンからクイーンになる)を連想させる。実際このドラマには『アリス』が元になっているような要素が散りばめられている。前述のハンプティー・ダンプティーは『鏡の国のアリス』にも出てくる。

「来杉」は『夢の途中』(『あまちゃん』に出演した薬師丸ひろ子版は『セーラー服と機関銃』というタイトル)を作詞した来生えつこから来ているのではないか。吉岡里帆は『ゆとりですがなにか』での役名は佐倉悦子だった。『夢の途中』というタイトルは、有朱というよりも、ドーナツホールのメンバーの状態にふさわしいではないか。

・巻(早乙女)真紀
すずめ、別府、家森を「巻き込んでいる」が、第7話では「巻き戻って」早乙女になったと言われる。プロデューサーのインタビューによると、このドラマの発端は『やっぱり猫が好き』みたいなことがやりたいね、ということだったらしい。猫の落書きを描いたり、猫のエプロンをしていたので、真紀は猫好きということだ。ドラマの中で真紀は猫、幹生はネズミに例えられている(直接的ではないが)。猫とネズミが一緒に暮らすのは無理だということであもる。幹生は有朱を殺したと勘違いして「一緒に沈んでくる」と言って真紀をおいていくが、彼女は必死に追跡する。この追う、追われるの図式も猫とネズミだ。

・巻幹生
「ミキオ」という名前は「ミッキーマウス」が由来でネズミを表しているのだと思う。幹生が失踪する直前、テレビの画面にはカピバラ(大型のネズミ)が映っていた。元カノも猫好き(ギロチンという名前の、破壊力がありそうな猫を飼っていた)だったので、そんなところは真紀と共通している。

クドカンとミッキーと言えば、『あまちゃん』に出てきた「子供は喜ぶが、大人は胃が痛くなる」ネズミの絵を思い出してしまう...







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